漢字のユーザビリティ

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エレベーターに乗り、無意識に6階のボタンを押す。毎朝繰り返される動作の中に思考の余地はない。ゆっくりと閉まりかけた扉の隙間から足早に近づいてくる配達員の姿が見えた。慌てて扉を開こうとタッチパネルに手を伸ばすが、そこで一瞬手が止まる。

「開」と「閉」という漢字。文章を読んでいるときに見間違えることは少ない。しかし、エレベーターのドアが閉まりかけた瞬間に限り、判別するのにわずかながら時間を要する。ユーザーインターフェイスの一要素として漢字を取り入れるときには注意が必要なのだと思う。

「開」と「閉」の代わりに「生」と「殺」だったらこの一瞬は存在しないだろうし、人によっては気持ちのよいインターフェイスと言えるのかもしれない。そんなことを考えつつ、完全に閉まった扉の向こうの配達員に心のなかで頭を下げる。もっとも2階を通り過ぎる頃にはそんなことは忘れて、ランチにはスシが食べたいなどと考えているのだけれど。